参考文献と暦計算の典拠 — 節気・日干・蔵干配点はどこに基づいているか
「あなたの日干は壬です」という一文の裏で、実際には何を計算しているのか。BaziTypologyの暦計算が何に基づいているかを、実装から明らかにします。
BaziTypologyの診断ボタンを押すと、生年月日から四柱を立て、日干とその五行が判定されます。結果画面には五行とアーキタイプ、本人ビューでは日干も表示されます(共有URLで他の人が見る画面には出ません)。この結果は診断の仕組みで説明した通り、解釈の入り込む余地がない①算出層に属する、再現可能な暦計算です。ですが「再現可能」というだけでは、その計算式が具体的に何にもとづいているのかは分かりません。この記事では、節気による年・月の区切り、日干の求め方、蔵干の配点という3つの計算について、実装のコードコメントと設計資料に残された根拠を一つずつ明らかにします。専門用語は初出時に用語集へリンクしていますので、あわせてご確認ください。
節気が年と月の区切りを決める
四柱推命の暦は、私たちが普段使うカレンダーとは区切り方が違います。月の切り替わりは1日始まりの暦月ではなく、太陽の黄経にもとづく二十四節気のうち、十二節と呼ばれる12の瞬間を基準にします。BaziTypologyの実装では、年柱は「立春」(太陽黄経315度)の前後で切り替わり、立春より前に生まれた場合は前年の年柱として扱われます。月柱は、小寒→丑月、立春→寅月、驚蟄→卯月、清明→辰月、立夏→巳月、芒種→午月、小暑→未月、立秋→申月、白露→酉月、寒露→戌月、立冬→亥月、大雪→子月という十二節の切り替わりにもとづいて月支が決まり、月干は年干から一定の規則(五虎遁)で順に導かれます。つまり、同じ「2月生まれ」でも、立春をまたぐかどうかで年柱の干支が1年分ずれることがあります。ただし、あなたの五行と4文字タイプの組み合わせ(バジタイプ)を決めているのは年柱ではなく日干です。日干は、次章で説明する通り年柱の区切りとは独立した、暦日ごとに連続する60干支のカウントで決まるため、立春の前日生まれと翌日生まれで年柱の干支がずれても、木×ENFPか水×ENFPかといったタイプの判定が入れ替わることはありません。
日干の求め方——節気とは独立した、連続する60干支のカウント
ここは誤解が生まれやすい部分なので、はっきり書いておきます。節気が決めるのは年柱と月柱の区切りであり、日干(日柱)は節気に由来するものではありません。日柱は、暦日ごとに切れ目なく巡り続ける60種類の干支の連続カウントによって決まります。具体的な手順はこうです。まずグレゴリオ暦の生年月日からユリウス通日(JDN)という、紀元前から連続して数えられている通し日数を求めます。そのJDNに一定のオフセットを足して60で割った余りが、60干支のうち何番目にあたるかを示す番号になります。BaziTypologyの実装では、このオフセットの値を、1900年1月1日=甲戌、1912年2月18日=甲子、1949年10月1日=甲子、1970年1月1日=辛巳、2000年1月1日=戊午、2001年1月1日=甲子、2024年1月1日=甲子という7つの独立した既知の日付・干支の対応関係で較正し、交差検証しています。60干支番号が決まれば、その天干(十干)が日干です。十干にはそれぞれ五行が対応しており(甲乙=木、丙丁=火、戊己=土、庚辛=金、壬癸=水)、これがその人の五行の中心になります。たとえば日干が壬なら五行は水となり、申告した4文字タイプ次第で水×INFJにも水×ISTJにもなります。日干が丙なら火となり火×ENFPのように、日干が庚なら金となり金×INTJのように、五行とタイプの組み合わせが決まっていきます。なお四柱推命の体系には出生時刻から立てる時柱も存在しますが、本診断のフォームは出生時刻の入力を求めておらず、時柱は算出しません。
蔵干の配点——本気・中気・余気とその出典
結果画面に表示される「五行バランス」の%表示にも、もう一段階の計算が使われています。四柱推命では、天干だけでなく地支のそれぞれにも、内に秘めた天干(蔵干)が1〜3本内包されているとされ、これを本気・中気・余気と呼びます。BaziTypologyの実装では、天干と蔵干それぞれに重みを付けて五行ごとに集計し、最大剰余法で百分率に換算しており、具体的な配点の手順は診断の仕組みにまとめています。この記事でお伝えしたいのは手順そのものより、その根拠についてです。四柱推命には複数の流派があり、蔵干の本数や中気・余気の採否には流派ごとに差があります。BaziTypologyは、その中でも広く一般に流布している標準的な一つの表と配点方式を採用しており、特定の一書物や一流派のみを唯一の正解として採用しているわけではありません。
節気の瞬時をどう計算しているか——天文学的な方式
節気の切り替わりを正確に求めるには、ある年のある瞬間に太陽が黄道上のどの位置にあるかを計算する必要があります。BaziTypologyの実装では、Jean Meeus著『Astronomical Algorithms』第2版第25章に収録されている、低精度太陽位置式(VSOP87に準拠した切り詰め級数に、光行差と章動の近似補正を加えたもの)を使って太陽の視黄経を求めています。さらに、地球時と世界時のずれ(ΔT)については、Espenak & Meeus(2006年、NASA)による多項式近似で変換しています。目的の黄経に太陽が到達する瞬間は、この計算式を反復して収束させる方法で求めており、1900年から2100年の範囲でおおむね分オーダーの精度を持ちます。タイムゾーンは、出生地の情報がない場合は既定で日本標準時(UTC+9)を基準に判定しています。この計算そのものには解釈の余地がなく、同じ生年月日を入力すれば誰が計算しても同じ節気の前後関係にたどり着きます。
BaziTypologyが採用した流派・判断のまとめ
ここまでの内容を整理すると、BaziTypologyの暦計算は次のように組み立てられています。年柱・月柱の区切りは、二十四節気にもとづく標準的な方式を採用しています。日柱(日干)は、節気とは独立した連続60干支のカウントで求めており、複数の既知の日付で較正・検証済みです。蔵干の対応表と配点の重みは、四柱推命で広く流布している標準的な一つの方式に準拠しており、流派間で差がある部分については特定の書名を根拠として示すのではなく、この点を誠実に明記することを選んでいます。節気の瞬時を求める天文計算には、Jean Meeusの著作とNASAの天文学者による近似式という、天文学の分野で広く参照されている標準的な方法を採用しています。これらはすべて診断の仕組みでいう①算出層の話であり、生年月日から一意に、誰が計算しても同じ結果にたどり着く部分です。ただし、①算出層の計算が再現可能であることは、その先にある80アーキタイプの記述(③解釈層)が正しいことを意味しません。ここで述べているのは解釈のためのフレームワークであり、検証された予測ではないという前提を、常に区別して読んでいただければと思います。
この記事で分かること・分からないこと
この記事から分かるのは、BaziTypologyが四柱・日干・五行バランスをどのような手順と根拠で算出しているかという、①算出層の透明性です。生年月日から年柱・月柱・日柱と日干が一意に定まる過程は、恣意的な判断が入らない暦の計算です。一方で、分からないこと・この記事の範囲外のことも明確にしておきます。日干や五行バランスの数値がそのままあなたの実際の性格や能力を保証するものではありませんし、蔵干の配点方式は流派間で差があるため、他所で計算された四柱推命の結果と本診断の数値が完全に一致するとは限りません。算出そのものが正確であることと、そこから導かれる解釈的な記述が「当たっている」かどうかは、別の話だとご理解ください。
季節と五行を結びつける伝統的な考え方や、月柱の五行が「五行バランス%」にどう反映されるかは節気と五行で詳しく解説しています。
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